ケミカルリーマンの生活を研究するブログ

化学メーカーで研究開発する筆者が日々の生活を考察していきます。

【化学】日本の化学業界も会社の垣根は溶けていく?

どうもこんにちは。
今日は化学業界の人材流動性について考えてみました。
 
先日の日本化学会ではキャリアに関するランチョン企画がありました。
本来は学生向けなのでしょうか、参加者は9割方学生さんです。社会人は私含め4人ほど。
 
最近の就活事情はどんなものか話を聞いてみよう…ぐらいの軽い気持ちでしたが、思いの外なかなかアツいイベントで参加して正解でした!
 

オープニング:博士を取ろう…?博士号は本当に必要?

 これからのキャリアを考える上で、将来を見通した計画を立てる必要があります。
いまの学生たちが最も働き盛りとなる40から50代になるのはおよそ20から30年後ですね。
その頃にはAIやロボット社会に入り込み、単純労働はほとんど駆逐されているでしょう。
その世の中でどう生きるか?を考えたとき、より高度な技術と思考力を持った人間が必要とされ、生き残れるでしょう。
(なので、博士号を取りましょう。)
 
といった内容の説明が冒頭にありました。
確かに将来の社会の変化を自分の事として受け入れていくべきですね。
結構みなさん聞き入ってましたね。
 
ただ、博士号のような資格は注目されなくなり、より実力重視で個人の中身が見られる時代になるのではないかと思いますが…いかがでしょう。これがいわゆるポジショントークかーと私は感じました。
 

質疑応答:化学系企業での進路について

 続いて、学会から選ばれたファシリテーターの自己紹介があり、
その後は6人ぐらいにグループ分けされたテーブルごとに、自己紹介と質疑応答の時間に入りました。
 
私の班は学生2人、若手社会人2人、ベテラン社会人2人、といった構成でした。参加していた数少ない社会人はすべてこのテーブルに集められたようです。
 
 
質問内容としては、
就職するか大学院に進学するか、とか、会社で不本意な異動があったがどう受け止めるべきか、といったもので、
それぞれ、大学院に進学するべき、とか、その場所でできることを精一杯やろう、といったアドバイスがなされていました。
 

アフタートーク:企業から自立した個人の例

私が面白いと思ったのは質疑が一巡したあとのアフタートーク的な時間でした。
 
製薬系のメーカーに勤めるベテランの方からの発言で、
「海外製薬メーカーでは、色んな企業が集まるカンファレンスの場でも割とオープンに技術の話がされる。(会社を超えて技術的な議論を深めているのだから、そんな海外メーカーに対して)日本の企業は技術で勝てるわけがない」というものがありました。
 
これはすごく痛感するところがあります。
「知の囲い込み」とでもいうのでしょうか。
データや技術知見が外に出ないので、日本のあらゆるところでほぼ同じような実験が何度も何度もされていることと思います。
単純に考えて無駄が多いよなーと。
もうちょっとこう、技術を共有化するプラットフォーム的なものがあってもいいのかなと思います。
ケムステは一つの答えかもしれません。
 
もうひとつ、同じ方から続けざまにもうひとつ興味深いコメントがありました。
「企業の技術者が本人の持つ技術や伝手を使ってコンサル的な仕事もする。」
 
技術は会社のものでもあるけれど、同時に個人が持つものでもある、というニュアンスを感じました。つまり個人が持つ技術を武器に会社の外で自立的に仕事をするということですね。
会社から独立する話は日本でもいろんな業界でよくある話ですが、それは個人でも動ける業界が多いですよね。
実験設備とかが必要な実験系の会社ではほとんど聞かない話ですし、こういう会社は知財が大事なのでコンサル的な仕事もほとんどないだろうと思います。
 実際に上記の例がどんな業務内容で、実際どれぐらいの数の事例があるのかはわかりませんが、とても気になる話でした。
 
そして最後に、核心的な言葉をさらっと聞きました。
「企業の境界が薄くなる」
 
いろいろと課題はあるのでしょうが、本質的な方向性としてはこれが答えなのだろうと思います。
ちょっとわくわくしてきますね。。
 
今の会社形態って、結構な無駄がありますよね。
似たような事業をやる会社がいくつもあって、互いに削り合う構造じゃないですか。
そのうち、会社対会社の構造から、たとえば対地球の構造になるかなと。
そうすると、会社の枠ってちょっと邪魔になりますよね。
 
その時、技術者は企業に属する形態ではなくなるのでしょう。
個人で、あるいは技術者グループに属する形態になるでしょうか。
やっぱり、個人は個人のスキルをとことん上げていき、自立できる人材になるとを意識していくべきですよねー。
 
「非中央集権」は今の時代を表す象徴的なキーワードだと思います。この流れがいずれ化学の世界にもやってくる、ということです。
ちょっと先の話かもしれませんが、化学業界のキャリアに関する話でした。